火星無人探査機 フォボス・グルントの打ち上げ間近 [宇宙のロマン]
ロシアが2001年より進めてきた、火星探査プロジェクト「フォボス・グルント」(Фобос-Грунт、グルントは「土」の意味)計画による火星無人探査機の打ち上げが、いよいよ今年の11月に打ち上げられることになりました。
宇宙開発史(4) ソユーズ、月面に到着せず-ソ連の有人月飛行計画はなぜ実現しなかったか [宇宙のロマン]
ルナ16号、月面から土を持ち帰る
ソ連の有人月飛行計画はロケットの開発失敗(参照:実用化に至らなかった幻のN-1ロケット)から断念することを余儀なくされたのですが、アポロ11号によって”人類初の月面到着”という栄誉をさらわれっぱなしにできず、月から土を持って来るくらいのことなら、わざわざ多大な資金を使って有人宇宙船を送り込まなくても無人探査機で間に合う、と米国(西側陣営)に見せびらかさないばかりに、1970年9月12日にルナ16号を打ち上げ、「豊かの海」へ無事軟着陸させ月の土壌サンプルを地球に持ち帰ることに成功しました。
ソ連は、ルナ16号に引き続いて、二ヶ月後の11月20日にはルナ17号を打ち上げ、これも無事に「雨の海」に軟着陸させ、土壌サンプルを採集するとともに、初めて無人月面車ルノホート1号をバイコヌール宇宙基地からのリモートコントロール(遠隔操作)で走行させ月面探査を行いました。
しかし、当時、米国もその他の西側諸国も知らなかったのは、ルナ16号より先に、いや、正確に言うとアポロ11号より先に月から土を持って来る目的で打ち上げられたルナ15号という無人探査機があったということです。
ルナ15号が打ち上げられたのは7月13日、つまりアポロ11号より三日前にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、17日には月周回軌道に達し、数回の軌道変更を行った後、20日に近月点16Kmの軌道に入りました。 この時、アポロ11号はすでに月周回軌道に達していおり、同日午後20時17分(UTC)にアポロ11号は「静かの海」へ無事着陸しました。
しかし、ルナ15号はまだ周回を続けており、予定ではアポロ着陸の2時間後くらいに軟着陸するはずでしたが、着陸予定地点のデータ不足から、さらに情報を得るために軌道滞在時間を18時間延長しました。
結局、この延長時間が、アポロ11号に人類初の月面到着と月の石(土壌)採集という二つの栄誉をもたらすことになってしまったのです。
ロシアの宇宙博物館に展示されているルナ16号のレプリカ
宇宙開発史(3) ”ヒューストン、こちら静かの基地、イーグルは着陸した!” [宇宙のロマン]
前回は、ソ連(現在のロシア)政府が「ボスホート計画」につぐ「ソユーズ計画」を1964年8月に承認し、革命50周年にあたる1967年に有人月周回を、また1970年には有人月面着陸を目標としていたことを述べました。
近代宇宙開発の歴史を見る上で重要かつ忘れてはならないのは、宇宙開発事業というものは、ただ単に技術的にソ連(現ロシア)が優れている、いや米国だといった次元だけの問題でなく、政治的、経済的なウィイトが極めて大きい事業、すなわち、その国の宇宙開発政策・決定および宇宙開発事業への資金投入額によって、発展するか沈滞するかが決まってしまうということです。
スペースシャトルのあとを継ぐのは… [宇宙のロマン]
5月16日に米国フロリダのケネディ宇宙センターから打ち上げられ、様々な宇宙実験用機材や測定・探索用装置などを国際宇宙ステーション(ISS)に運んだスペースシャトル・エンデバー号は6月1日にケネディ宇宙センターに無事帰還し、最後のミッションを終えました。
宇宙開発史(2) 米ロの熾烈な宇宙開発競争 [宇宙のロマン]
前回は人類初の地球周回宇宙飛行を果たしたボストーク1号とガガーリン中尉の話しをベースに書きましたが、今回は、このボストーク1号の前後に渡って宇宙開発史を顧みたいと思います。
米ソの宇宙開発競争
米国、ソビエト連邦(現在のロシア)とも、第二次大戦中にV2ロケットなどを開発したヴェルナー・フォン・ブラウンなどの優秀なドイツのロケット科学者をドイツの降伏後にそれぞれ自国へ連れて行き、ロケットの開発を進めました。
第2時大戦後、世界は米国を盟主とする資本主義・自由主義陣営(西側陣営とも呼ばれた)とソ連を盟主とする共産主義・社会主義陣営(東側陣営)に分かれ、一触即発の緊張した時代が続く冷戦時代に入りました。
両陣営とも、いかに自分たちの思想・主義体制が優れているかを相手陣営に対して宣伝するのに躍起になり、そのプロパガンダの有効な手段の一つとして使われたのが宇宙開発競争でした。
また、宇宙開発技術は、そのままスパイ衛星や大陸間弾道核ミサイルなどの技術において敵陣営より優位に立つことを可能とすると両陣営とも考えたため、宇宙開発はそれこそ凌ぎを削る激しいものとなりました。
フォン・ブラウンなどのドイツの優秀なロケット技術者の多くを… 続きを読む
アンドロメダ星雲から宇宙の大規模構造まで [宇宙のロマン]
アンドロメダ銀河はM31またはNGC224として知られている銀河でアンドロメダ座に位置し、
目視で確認できる渦巻銀河で、アンドロメダ星雲の通称で知られています。
宇宙開発史(1) ガガーリンから50年 [宇宙のロマン]
人類が初めて宇宙飛行をしてから早くも50年を迎えました。
世界初の宇宙飛行は旧ソ連(現ロシア)のボストーク1号(Восток-1)によって行われ、ユーリ・アレクセーエヴィチ・ガガーリン中尉(当時27歳)の搭乗したボストーク1号はチュラタム(レニンスク)近郊の発射基地からボストークロケット(R-7ミサイルの改良型)によって1961年4月12日に打ち上げられました。(注:一般的に発射場所はバイコヌールと言われているがこれは間違い)
カプセル内のガガーリン中尉
ボストーク1号とガガーリン
ボストーク1号は181~327キロメートルの高度を楕円軌道飛行し、1時間48分におよぶ飛行のあと、アフリカ西岸アンゴラ上空で42分間逆噴射を行い減速し、カプセルから射出シートによって高度7千メートルで脱出しパラシュートで無事帰還しました。飛行距離はわずか3万8620Kmという短いものでしたが、人類初の宇宙飛行という偉業達成に貢献したガガーリンは、なんと宇宙飛行中に二階級特進し、空軍少佐となってモスクワで行われた盛大なパレードに参加しました。
この異例ともいえる二階級特進は、実はソ連の首脳部がガガーリン中尉の生還率は極めて低いと予想していたため、殉死した将校にあたえられる特進を承認していたというのが真相だとか。
バイコヌール宇宙基地の所在地
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宇宙からの帰還後、ガガーリンはソビエトの英雄として共産主義の宣伝のため世界各地を訪問しましたが、ガガーリンは激変した環境にうまく適応できなかったようで飲酒をはじめ、精神的にも問題を抱えるようになり、1961年には自傷行為までを起こしています。
20億個の地球 [宇宙のロマン]
ボイジャー1号とスタートレック [宇宙のロマン]
火星植民地のパイオニアになろう! [宇宙のロマン]
そう、月の次の目標とされている火星への有人飛行計画で、NASA(米国航空宇宙局)が帰還を考慮しない有人飛行を計画している、というものでした
思わず、エッ、エッ、エ~ッ!!!
と叫んでしまいました。
第二の地球はすぐそこに!? [宇宙のロマン]
この星は赤色わい星「グリーズ581(Gliese 581)」の惑星で、「グリーズ581g(Gliese 581g)」と名付けられました。生命居住可能領域とは、生命の存在に必要な水が液体の形で存在することが可能な温度を維持できる領域気で、周知のように水は恒星からの距離が近くても遠くても、(生命が発生できる)液体の形で存在することはできません。この点においてグリーズ581g は、地球が太陽から適度な距離にあるのと同様に、恒星から適度な距離に位置しているのです。
火星に生物? 有人火星飛行の実現はいつに? [宇宙のロマン]
火星に生物がいた!
と言っても、H.G.ウェルズが「宇宙戦争(The War of the Worlds-1898年)」で描いた、例のタコみたいな火星人ではありません。
BBCニュースによると、メキシコの科学者グループは、1976年にNASAが火星に送りこんだ探査機(バイキング1号、2号)による火星地表サンプル検査結果による”火星に生命はいない”という結論は間違っている、と発表しているそうです。
バイキング探査機の話しはかなり前のことなので、少々年配の方でないと記憶にないと思いますが、この二つの火星探査機はランダー(軟着陸部分)を火星表面に降下し、各種測定装置によって大気構成などの測定を行うとともに地表サンプルを採集し炭素に富んだ分子の存在― つまり生命の有無を調査しましたが結果は”無”であったため、火星には生命は存在しないという結論に達したものです。
しかし、メキシコ国立大学の科学者グループはバイキングのランダーは着陸地点に存在したかも知れない生命の存在を示す物質(炭素に富んだ分子)は着陸噴射により破壊されてしまった可能性があると主張しており、その証拠として同じくNASAが2008年に火星に送りこんだフェニクス・マーズランダーは火星北極地域の地表に塩素をふんだんに含んだ過塩素酸基(perchlorate)の存在を発見したことを挙げています。
このフェニクス・マースランダーの発見に基づいて、メキシコの科学者チームは”過塩素酸がバイキング・ランダーの着陸地点にも存在した”と仮定して着陸シュミレーションを行い、地表がランダーの逆噴射ガスで熱せられたのと同じように熱したところ化学反応により、二酸化炭酸ガス(CO2)、クロロメタン(Chloromethane)、ジクロロメタン(Dichloromethane)が発生。
そしてこれらの一連の化学反応は、地表の有機物質をすべて破壊し尽くしただけでなく過塩素酸をも破壊してしまったのです。これらのシュミレーションは、火星地表にもっとも似た環境であると思われるメキシコのアタカマ砂漠で行われました。
フェニクス・マーズランダーは過塩素酸基の存在を発見
米航空宇宙局(NASA)のエイムズ研究所の宇宙生物学者、クリス・マッケイ氏は、「メキシコで行われた実験結果は、火星に生命が存在するかどうかといった根本的な問いに対しての回答にはならないが、我々はどのよな方法で生命の存在を確認すべきかという問いに対しての回答になる」とコメントしています。マッケイ氏は有機物は生命体をその根源とするものと非生命体を根源するものがあり、隕石などにも有機物が発見されると指摘しています。(では、隕石の有機物はどこから来たのか、というニワトリと卵のような議論になりますね)
過塩素酸は塩素と酸素からなる分子であり、火星地表に数十億年の間存在し続けたかも知れず、ランダーの逆噴射ガスによって活性化(この表現が正しいかどうか分かりませんが)し、地表に存在した全ての有機物を破壊したかも知れないのです。
そしてNASAの科学者たちがバイキング・ランダーから送信されてきた火星地表サンプルの解析データーの中に塩素を含む有機物を発見したとき、彼らはランダーに積載されていたクリーニング液(測定装置などの?)が漏れて地表を汚染したと勘違いしたかも知れないのです。
現在のところ、火星表面に存在する有機物は火星で合成されたものか、または他の天体から隕石によって火星に運ばれたものか判明していません。それは来年(2011年)にNASAが打ち上げを予定しているマーズ・サイエンス・ラボラトリーによる調査結果を待つしかありません。
太陽の1000万倍の明るさの巨大恒星 [宇宙のロマン]
南米チリにあるESOの望遠鏡VLTで、天の川銀河の隣にある大マゼラン雲のタランチュラ星雲を観測中に発見されたもので、地球から16万5千光年の距離にある若い星団内に、太陽の数百万倍の明るさを放つ星が複数見つかっているそうです。
今回の発見は南米チリのアタカマ砂漠にあるVery Large Telescope (超大型望遠鏡VLT)の観測によって得られた。
それらの星の中でもっとも明るいのが太陽の265倍の質量をもち、1000万倍の明るさをもつ恒星で、R136a1と名付けられたこの星は約100万年前に誕生したときはなんと太陽の320倍の質量があったと推測されています。
R136a1の大きさは太陽の数十倍で、大きさだけなら、オリオン座のベテルギウスの赤色超巨星は太陽の大きさの1千倍ほどあるけど、重さは数十倍しかなく、密度はR136a1の方が圧倒的に高いそうです。
南米チリにある欧州南天天文台が撮影したタランチュラ星雲。巨大恒星R136a1が発見されたのは、最も拡大した右の写真の右下の明るい領域。
星は活動が激しいほど燃料である水素を早く消耗してしまうので寿命が短くなります。
このため、R136a1も誕生してから100万年経過した間にかなり水素を燃焼して質量が減っているわけです。
私たちの太陽の寿命は100億年と言われ、現在、寿命の半分、50億年ほど経った時期にありますが、R136a1の寿命はあと100万年ほどと推測されており、普通、太陽の質量の8倍以上の星は寿命の終わりに大爆発(超新星と呼ばれる)を起こしてブラックホールになったりしますけど、R136a1はあまりにも質量が大きいので最後は大爆発して何も残らないと考えられているとか。
ちなみに、これまでは恒星の質量は最大で太陽の150倍程度と考えられていたため、今回の発見によって恒星の形成や寿命の終わりの姿などに新たな問題を投げかけることになります。