ジェームズ・ウエッブ望遠鏡 [宇宙のロマン]

  ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope=略称JWST)は、アメリカ航空宇宙局が中心となって開発を行っている赤外線観測用宇宙望遠鏡です。

ハッブル宇宙望遠鏡の後継機として、2018年以降の打ち上げを目指して開発が進められています。 JWSTの名称は、NASAの二代目長官ジェイムズ・E・ウェッブ にちなんで命名されたもの。ウェッブは1961年から1968年にかけてNASA長官を務め、アポロ計画の基礎を築くなど、アメリカの宇宙開発を主導する重要な役割を果たしました。JWSTは「次世代宇宙望遠鏡」 (NGST / Next Generation Space Telescope) と呼ばれていましたが、2002年にJWSTと改名さました。

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の想像図
ジェームズ・ウエッブ望遠鏡


JWSTの任務

JWSTの主な任務は、ビッグバンの残り火である赤外線(宇宙背景放射)を調査し、今日観測可能な宇宙の初期の状態について観測することです。この目的を達成するために、JWSTは高感度赤外線センサー、分光器などを搭載します。なお、JWSTの運用は、ESAとNASAが共同で行う計画となっています。

打ち上げ後JWSTは、太陽 - 地球のラグランジュ点の1つ(L2)に置かれることになっています。JWSTは、ハッブル宇宙望遠鏡(以下「HST」と記す)のように地球の周回軌道を飛行するのではなく、地球からみて太陽とは反対側150万kmの位置の空間に漂わせるように飛行します。

太陽 - 地球のラグランジュ点
ラグランジェポイント



観測のためには、機体を極低温に冷却し、太陽や地球の光なども避ける必要があります。そのため、JWSTは折畳まれた遮光板を搭載し、遮光板によってJWSTの機体に到達する不要な光が遮蔽されるようになっています。L2点においては、地球と太陽が望遠鏡の視界の中で常に同じ相対的位置を占めるため、頻繁に位置修正しなくとも遮光板を確実に機能させることができるからです。
ハッブル望遠鏡(HST)は地表から約600kmという比較的低い軌道上を飛行しています。このため、光学機器にトラブルが発生しても宇宙飛行士が宇宙船で現地へ行って修理することが可能でした。これに対し、JWSTは地球から150万kmもの遠距離に置かれるため、万が一トラブルが発生してもHSTのように修理人員を派遣することは事実上不可能とみられています。


構造

JWSTの質量は6.2 tとして計画されており、ハッブル宇宙望遠鏡(約11 t)の約半分です。ただし、ベリリウムを主体とした反射鏡の主鏡の口径は約6.5mにも達します。これはHSTのメーンミラーの口径2.4mの2.5倍で、面積は5倍以上にもなります。この点から、HSTをしのぐ非常に高い観測性能が期待されています。しかし、鏡の重量は軽量化されています。
JWSTのメーンミラーの直径は、現在存在するいずれの打ち上げロケットにも収まらないほど巨大です。ただし、主鏡は一枚鏡ではなく18枚の六角形のセグメントに分割されており、各鏡セグメントの重量は約20kgであり、望遠鏡が打ち上げられた後に高感度のマイクロモーターと波面センサーによって正確な位置に導かれて展開するようになっています。なお、ケック望遠鏡のような地上の望遠鏡は重力負荷や風力による影響を克服するために、能動光学によって鏡セグメントを常に調整し続ける必要がありますが、JWSTの場合、この初期配置を終えると、鏡セグメントを再度動かすことは、まず行われないと考えられています。


ウェッブ望遠鏡のミラーとハッブル望遠鏡のミラーの比較
ジェームズ・ウエッブ望遠鏡主ミラー



JWSTにとっての挑戦的課題として、反射鏡を低温に維持することを挙げることができる。宇宙誕生初期の星や星雲をとらえるためには非常にエネルギーの小さい赤外線をとらえる必要があり、反射鏡をマイナス220度にまで冷却しておかなければならない。その冷却のためにも、JWSTは地球から遠く、また地球によって太陽光が遮られるラグランジュ点(L2)に送り込まれる。
主鏡の鏡面は全体としても六角形をなしており、集光部と鏡がむき出しとなっている。このため、主鏡の鏡面は電波望遠鏡のアンテナを連想させる形状をしている。また、本体は筒型ではなく、主鏡の下にシート状の遮光板が広げられた形となっている。


経緯

2003年頃までは2010年に観測活動を終えることになっていたハッブル望遠鏡(HST)の後継機として、2011年打ち上げが予定されていました。しかし、JWSTの開発が順調に進まず、HSTも補修による延命措置を受けたため、打ち上げは2015年以降に延期されました。
2011年6月、コストが当初予定の4倍以上になり、打上げも2018年以降(2020年以降の可能性も)になるとの報告が行われました。このため、増大し続けるコストを懸念して計画中止を求める声がNASAの他のプロジェクトからも上がっており、今後の状況は流動的になっていますが、宇宙の初期状態の解明のためにも、ぜひとも打ち上げてほしいものです。











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つなみ

よいお年を~♪v(*'-^*)^☆
by つなみ (2013-12-31 11:10) 

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