超巨大天体望遠鏡の時代 [宇宙のロマン]

 宇宙モノのニュースにはいつもワクワクするLobyですが、

その宇宙の謎・神秘を観測するのに欠かせないのが天体望遠鏡です。

そこで今回は、この天体望遠鏡に関するニュースを紹介します。

 

新X線望遠鏡 「NuSTAR」

6月13日、米航空宇宙局(NASA)は、ブラックホール発見のためにオービタル・サイエンス(Orbital Sciences)社によって開発された「NuSTAR」(Nuclear Spectroscopic Telescope Array=核分光望遠鏡アレイ)」を打ち上げました。

スターゲイザーから発射されるペガサスXLロケット

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 Image credit: NASA/JPL-Caltech

「NuSTAR」は高エネルギーX線撮影装置を装備する高性能宇宙望遠鏡で、ペガサスXLロケットに搭載され、同じくオービタル・サイエンス社が開発した航空機「スターゲイザー(L-1011 Stargazer)」の胴体に吊り下げられ1万2千メートル高度まで運ばれ、そこから宇宙めがけて発射されました。

この親機にロケットを抱かせて高空で発射する方式は、米国が1950年の後半に実験をしていたX-15ですでに使われていましたね。

 

B-52に抱かれて高度をめざすX-15

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翼下に吊るされたX-15
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NuSTARは宇宙空間に出てから長さ10メートルのマストを展開し、データ収集を開始する。

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Image credit: NASA/JPL-Caltech






NuSTARの観測ターゲットの一つは、ブラックホールを発見しそれを調査することです。 ブラックホールは謎の多い天体であることから、NuSTARによる調査よって解明のきっかけが掴めることが期待されています。

NuSTARのもう一つの目的は、恒星の爆発による高エネルギーX線を集光することで、どのようにして銀河や恒星や惑星、さらには生命の素材を宇宙にまき散らすのかという謎の解明です。  非常に重い恒星が水素を燃やしつくすと、しだいに原子が融合して重い元素に変わっていき、最終的に寿命が終わった星は大爆発して超新星となります。そのとき酸素、炭素、鉄などの重い元素が宇宙にまき散らされるわけです。  NuSTARは、このような爆発の初期に作られる放射性原子核から放出される高エネルギーX線を観測します。  

ブラックホールの想像図

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また超新星の爆発の後には、強力な磁場を持つマグネター(帯磁星)や高速で回転するパルサーなどが生まれることがあります。NuSTARは、こうしたきわめて高密度の各種中性子星についてのデータも集めることができます。  このような中性子は、一種の実験室の役割を果たし、そこでは、極端な重力の中で物質に生じる特殊な物理現象が観察できます。  NuSTARの研究チームは、これら明確に予定された調査目的以外に、未知の対象を探査することもできるそうです。

 

 

ヨーロッパ超大型望遠鏡(E-ELT)
 
 
NASAのNuSTARとともに、大きな成果をあげると期待されているのが、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が計画を進めている次世代超大型望遠鏡(E-ELT) です。

ヨーロッパ南天天文台、ESO理事会の理事会は、2012年度予算を承認、建設予定地までの道路建設費用や、一部の望遠鏡用光学部品の開発費用が含まれており、2012年中ごろに最終的な承認が得られるものと予想されています。
 
 
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次世代超大型望遠鏡の建設予定地(チリ、パラナル山)
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E-ELT計画はESOが引き受けた中でも最も巨大な天体望遠鏡プロジェクトで、口径は39.3m。完成の暁には世界最大の地上の光学・赤外望遠鏡となります。なお、運用開始は2020年代初頭となっています。
 
なお、後述のTMTの場合同様、E-ELT計画で建造される望遠鏡は、現在の技術では口径42mのシングルミラー(反射鏡)の製造は不可能であり、ガラス材料のヤング率や体積膨張、破壊応力等から計算した場合、ミラーのサイズ限界は9m程度になります。このためE-ELT計画では、口径0.42m程度のミラーを1050枚組み合わせたハニカム型の単一望遠鏡の建造が計画されています。
 
E-ELT計画に関しては、日本からは、補償光学系(AO)や観測装置開発等を含めて、技術貢献が可能なため、国立天文台でも後述のTMT計画とならんで、E-ELT計画参加の方向で調整が進められています。
その理由としては、E-ELT計画のような大型技術プロジェクトへの参加は、国際貢献のみならず、将来のELT実現に向けたプロジェクトの試金石になること、そしてまた、天文学分野でのより強固な世界天体観測組織実現に向けた国際交流の舞台にもなるため、若手の研究者を中心にして実現に向けて準備が続けられています。(Wikipediaより引用)
 
 
 
 
Thity Meter Telescope (TMT)
 
またE-ELTとは別に、日本、米国、カナダ、中国、インドなどの国際協力で、口径30mの次世代超大型光学赤外線望遠鏡「TMT」の建設計画を進めています。日本では国立天文台が同計画実現のために、活発な準備活動を進めています。(国立天文台のTMT推進室HP
 
 
30m口径次世代超大型光学赤外線望遠鏡の完成予想図
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Credit:国立天文台TMT推進室提供
 
Thity Meter Telescopeとあるように、これは口径30メートルの光学赤外線天体望遠鏡で、六角形ミラー492枚を組み合わせた複合鏡となります。
稼動予定は2021年で、このTMT望遠鏡、補償光学を利用することができる赤外線観測においては、30メートルの口径を活かしてハッブル宇宙望遠鏡を10倍以上も上回る解像度を実現できるというからものすごいものです。
 
銀河系中心付近の近赤外線画像。左が補償光学なし、右が補償光学を利用してとられた画像(ケック望遠鏡による)
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TMT計画は、米国カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学、カナダ大学連合によって構想され、独自の望遠鏡構想をもっていた日本の国立天文台がこれに合流する形で協力しています。建設地はハワイ・マウナケア山に決定され、2021年の始動を目指して建設開始に向けた準備が進められています。
 
 
マウナケア山の天体望遠鏡群
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TMTの観測ターゲットは、地球のような惑星の姿を直接とらえる観測に取り組むとともに、惑星の反射光や惑星大気を透過してくる星の光を分析することにより、惑星の表面や大気の組成を調べ、生命の存在を探ることです。
TMTでは、現在検討が進んでいる Second Earth Imager for TMT (SEIT) という観測装置を使って、地球型系外惑星の直接撮像を目指しています。
 


 
TMTのもう一つのターゲットは、宇宙で最初に生成された星々からなる銀河の観測です。宇宙初期の銀河はこれまでにハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡によって数多く発見されてきていますが、その正体を調べるにあたって、TMTによる分光観測や補償光学を用いた高解像度観測によって宇宙の夜明けの時を見るだけでなく、理解することが可能となります。
 
 
 


巨大マゼラン天体望遠鏡

巨大マゼラン望遠鏡(Giant Magellan Telescope、GMT)は、ハッブル宇宙望遠鏡の後継機にあたるジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡との連携観測を主目的とした超大型地上望遠鏡です。

GMT計画には、ワシントン・カーネギー協会、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、スミソニアン協会、アリゾナ大学、ミシガン大学、オーストラリア大学、テキサス大学、テキサスA&M大学の9機関が参加しています。同望遠鏡は、2000年より観測を開始したマゼラン望遠鏡の次代を担う望遠鏡の開発計画でもあり、チリのラスカンパナス天文台に建設される予定となっています。


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巨大マゼラン望遠鏡の主鏡は口径8.4メートルの円形ミラーを7枚組み合わせた独特のもので、有効口径は21.4メートル、焦点距離18メートルです。これはハッブル宇宙望遠鏡の80倍の集光力であり、21.4メートルという大口径のメリットのため、分解能もハッブル宇宙望遠鏡の8倍となっています。 なお、大気の揺らぎを打ち消す補償光学の役割は副鏡が担うことになります。
観測波長は大気層により吸収されにくい近、中間赤外線で、宇宙望遠鏡との連携などにより、ブラックホール、暗黒物質、原始惑星、初期の宇宙などの調査に使用されると考えられています。(巨大マゼラン望遠鏡のサイト



巨大マゼラン望遠鏡は、ハワイのマウナケア山に建設され2018年から稼働の予定だそうです。
現在、ハワイのマウナケア山(標高4200メートル)の頂上付近には、合計13基の巨大望遠鏡が所狭しと設置されており、天文観測の中心地となっています。

前述のTMTも2018年の完成を目指していますが、マウナケア山には、日本の国立天文台が建設したすばる望遠鏡も設置されています。すばる望遠鏡は建設当時(1991年)は世界最大の一枚鏡望遠鏡(8.2メートル口径)でしたが、現在は巨大双眼望遠鏡LBTに設置された主鏡(直径8.4メートル)が世界最大です。

 

日本の国立天文台のすばる望遠鏡(口径8.2m)

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 巨大双眼望遠鏡LBT(口径8.4m)

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巨大双眼望遠鏡LBTの構造

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 以上のように、世界中で巨大望遠鏡などが建造されつつあり、今後、さらに新たな発見があるものと期待されます。 とくに宇宙の初期に生成された銀河の調査では『ビッグバン理論』関連のデータ-、そして巨大恒星の最後の姿と言われるブラックホールの調査では、『一般相対性理論』を証明するの貴重なデーター等が得られると考えられています。


《終わり》
 
 
天体観測に手軽なお値段の天体望遠鏡を
 
 


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コメント 1

song4u

同じく、宇宙モノのニュースにドキドキ組のひとりです。^^;
いつもながら内容の濃い記事、誠にありがとうございます。
今回も大変勉強になりました!

しかし、天体の観測機材はこんな凄いことになってるんですね。
驚くとともに、大いなる期待を抱かずにはいられませんね。
by song4u (2012-06-17 12:56) 

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