現生人類とネアンデルタール人の密接な関係? [人類学]

現生人類の人口増加がネアンデルタール人を滅亡させた主原因―

このような新学説が7月28日の米国の科学誌サイエンスに発表されました。

英国ケンブリッジ大学の研究チームが行った調査では、現生人類とネアンデルタール人の人口比率は、新人類10に対して旧人類1の割合。

ネアンデルタール人少女の復元イメージ
Neanderthal_child.jpg

 

復元されたネアンデルタール人の頭骨(前)と現生人類の頭骨(後方) supremacia-numc3a9rica-dos-humanos-acelerou-fim-de-neandertais.jpg

 

 

以下はサイエンス誌記事の要約です 

この人口比率の差は、当然のように食料の確保― 獲物を見つけ狩りをする― には人数の多いほうが成功しやすい(現生人類)、という種にとって生存のために決定的なメリットを4万年前にもたらした。

それにプラスしたのがホモサピエンスがもっていた、はるかに”進んだ社会性”、つまりグループ活動だった。 研究チームのポール・メラース(Paul Mellars)とジェニファー・フレンチ(Jennifer French)の二人の調査員は、現生人類はネアンデルタール人より進化した人類であったため、道具をより効率的に使用する術や、食べ物の少ない冬に備えて食料を保存する方法なども習得していたと推測している。

研究チームが発表した新説は、フランス南部ペリゴール地方で初期の現生人類であるホモサピエンスの集落跡の発掘調査を実施し、遺物や痕跡を分析した結果出されたものである。 今回の発掘調査では、ホモサピエンスが住んでいた痕跡が多数見つかった。これまで発見された中で最大の集落のほか、多数の道具や動物などの食料の食べかすも大量に発見され、それにより、ネアンデルタール人がこの地域から追い出された可能性が示唆されている。

また、ホモサピエンスの集落に残されていた石器や宝飾品、工芸品がネアンデルタール人のものよりもはるかに手が込んでいたことから、ホモサピエンスはネアンデルタール人よりも複雑な社会ネットワークを構築し、頭脳も発達していたと考えられるという。 研究チームを率いたポール・メラース氏は、こうした技術・行動などの面での進化によってホモサピエンスは欧州全域にわたってネアンデルタール人が生活していた地域に進出し、定住することに成功したと指摘している。

ホモサピエンスの大量侵入のため、ネアンデルタール人は住み馴れた居住地域から生活環境がさらに厳しい地域へと追いやられてしまったのだろうと研究チームを推測している。そんなネアンデルタール人に、約4万年前に欧州全域を突然襲った寒波が最後のとどめを指したのではないかという。 しかし、この新設に対してはすでに専門家たちから反論が出されている。スペインのバルセロナ大学のホアン・ジリャオ教授は、ケンブリッジ大学の研究チームが行った調査方法は旧式であり、またすでに発表されている研究結果では、遺伝学的、考古学的に見てホモサピエンス人がネアンデルタール人にとって代わったのではなく、同化したのだと指摘している。

 

 ネアンデルタール人の住んでいた地域

Carte_Neandertaliens.jpg

 

 人類の進化図

Human_evolution.jpg

 

今回のケンブリッジ大学の論文は、以前、Lobyがブログに載せた論文(同じくサイエンス誌に発表)と反する主旨のものです。 以下、2011年7月3日のブログ記事からの引用です。

 現代人ももっているネアンデルタール人のDNA?

 現代人にネアンデルタール人の血が流れているという可能性については、以前、Lobyの本家ブログでも紹介しましたが、前回、この学説を唱えていると書いたマックス・プランク研究所(ドイツ)がヨーロッパのほかの学術機関の協力を得て進めていた研究がこのたびサイエンス誌に発表することになりました。


それによると、直系アフリカ系現代人を除く現代人には、1パーセントから4パーセントのネアンデルタール人の遺伝子があるそうです。
こ れは5万年から10万年前にアフリカを出た現代人の祖先たちがヨーロッパ大陸で先住民であったネアンデルタール人と遭遇し、交配した結果(研究者の間では 現代人の先祖とネアンデルタール人は約1万年間共生したと推定されている)ネアンデルタール人の遺伝子を受け継いだということで、この4年以上にわたる研 究の成果に世界中の人類遺伝子研究者たちが驚いているそうです。それは、遺伝子学上は”異種間交配は原則的に子孫を残せない”からなのですが、この問題を どのようにクリアして遺伝子を残せたのかについてはサイエンス誌に説明が載るか(Lobyは載らないと思います)、はたまた遺伝子学者たちが頭を悩ませて 新学説 or 説明をするのを待つよりほかないようです。


ちなみに、Svante Paabo(スバンテ・ペーボ)教授に率いられたマックスプランク研究所の研究チームは、この研究にあたって、クロアチアの洞窟で発見された3万8千年以 上前のネアンデルタール人女性3人の化石から、骨粉400ミリグラムを採取し、そのゲノム配列を4年かかって6割再現し、現代人のゲノムと比較したそうで す。
こう書くといかにも簡単そうですが、4万年近く経っている化石のゲノム比較というのは私たちが考えているより困難だそうです。それは、このネ アンデルタール人化石の骨粉サンプルには長年にわたって繁殖して来たバクテリアやカビのゲノムが混じっていたほか、ネアンデルタール人のゲノムは細かく断 片化して化学変化を起こしていたそうです。これらの問題を解決しながら今回、ネアンデルタール人の血(遺伝)はしっかり我々の中に生きているということを 照明したわけですが、ネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいることについての是非はともかくとして(ちゃんと受け継いでいるんだから是も非もありませんけどね...)、いつの時代でも科学の発達、新しい事(新学説)の発表・証明って並ならぬ努力の末に達成できるものだのですね。

(米国のサイエンス誌のHPに掲載されたマックス・プランク研究所の調査結果(英語ページです)はこちら

 

ネアンデルタール人とその生活についてはさまざま想像されているが...


neandertal-3.jpg

我々の想像以上に文化的な面をもっていたかも知れない...

Neanderthal.jpg


neandertal.jpg


ネアンデルタール人は死者をおもむろに埋葬していた
 
 
neanderthal (1).jpg

ネアンデルタール人は赤毛で肌色は白かったことがDNA解析で分かっている
01.jpg

 

 

参考サイト:生物史から、自然の摂理を読み解く メラネシアの起源 ネアンデルタール人の脳の発達


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