銀河鉄道の夜 [日本のSF作品]

  今回は『銀河鉄道の夜』の紹介です。

宮沢賢治(1896- 1933)の最高傑作といわれる本作品は幻想小説であってSFではないという人もいるようですが、LobyがSFと決めたらSFになるのです[あせあせ(飛び散る汗)]
ちなみに、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』は知らないけど、松本零士の『銀河鉄道999』は知っているという人もいますけど、『銀河鉄道999』は『銀河鉄道の夜』をベースにして創作されたことは周知の事実です。『銀河鉄道999』については後ほど取り上げるとして、まずは『『銀河鉄道の夜』の紹介です。


銀河は星の集まり
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主人公 ジョバンニ

孤独で空想好きな少年。歳は10歳~12歳?父親は漁に出たまま長く帰って来ない。家庭は貧しく母親は病気で寝込んでいるので、朝は新聞配達、放課後は活版所で活字拾いのアルバイトをしている。近所の子供たちは父親のことでジョバンニをからかったりする。近くに住む姉がいて料理を作ってくれたりする。唯唯一の親友は同級生のカムパネルラ。 ジョバンニとカムパネルラの父親同士も親友だった。ジョバンニとともに銀河鉄道に乗り込み共に旅をする。

あらすじ

学校の授業で 銀河系の仕組みについての勉強で、天の川について先生に質問されたジョバンニは、答えを知りながら答えることができません。次に指されたカムパネルラもジョバンニをおもばかってか答えません。


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   放課後、ジョバンニは活版所に行って活字拾いのアルバイトをします。 活版所の大人たちの態度は冷たいく、仕事を終えたジョバンニはアルバイト代をもらって家への帰路にパンと角砂糖を買って帰ります。 家に着いた序盤には牛乳が配達されてないことを知ります。 ジョバンニのお母さんは具合がよくなくずっと寝たきりです。 お父さんは漁師ですがもう長いこと帰ってきません。 町の人たちはジョバンニのお父さんはラッコの密猟で捕まっているとうわさをしています。
ジョバンニは届けられなかった牛乳をとりに牛乳屋へ行きます。 そのついでに烏瓜のあかりを川へ流す「銀河の祭り」を見に行きます。

牛乳屋では、出てきた老婆が要領を得ずに牛乳をもらえません。 途中で同級生のザネリたちに会い、お父さんのことでからかわれます。 一緒にいたカムパネルラは気の毒そうに黙って少し笑っていました。 同級生たちにからかわれたことで悲しくなったジョバンニは「銀河の祭り」には行かずに反対の方向にある町外れの丘へ一人で向かいます。 そして銀河を見上げて “ほんとうにサソリだの勇士だの宇宙にぎっしりいるのだろうか、ああ、ぼくはその中をどこまでも歩いてみたい” とジョバンニは考えます。 天気輪の柱の丘でジョバンニは一人寂しく孤独を噛み締め、星空へ思いを馳せます。

      太陽柱という説もある天気輪の柱
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  どこかで「銀河ステ~ション」という声がしたと思ったら、目の前がパッと明るくなってジョバンニは、さっきからごとごとと走り続ける小さな列車の中にいることに気がつきました。
夜の軽便鉄道の小さな黄色の電灯の並んだ車室に窓から外を見ながらすわっていたのです。
そしてそこには親友のカムパネルラも乗っていたのでした。

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カムパネルラが持っていた丸い板のようになった地図では、白くあらわされた天の川の左の岸に沿って一筋の鉄道線路が南へ南へと続いていました。 その地図には夜のような真っ黒な盤の上に、停車場や三角標、泉水や森がブルーやオレンジやグリーンなどの美しい光で散りばめられていました。

列車は北十字の前を通った後、白鳥の停車場で20分停車し、ジョバンニとカムパネルラはその間にプリオシン海岸へ行き、クルミの化石を拾い、大学士が牛の祖先の化石を発掘している現場を見ます。白鳥の停車場を出発してすぐに、 気のいい鳥捕りが乗車してきます。
彼は、鳥を捕まえて売る商売をしているのです。ジョバンニとカムパネルラは鳥捕りに雁を分けてもらい食べますが、お菓子としか思えない。すると突然、鳥捕りが車内から消え川原でさぎを捕り、また車内に戻ってきます。

 鳥捕りのエピソードのあとで車掌が検札に来ます。なぜかカムパネラの切符はねずみ色でした。そしてジョバンニのはグリーン色のもので、なんと天上どころかどこでも自由に行けるスペシャル乗車券でした。 ジョバンニが鳥捕りに少し同情して話しかけようとすると鳥捕りはいつの間にか消えていました。 そして突然、姉弟と青年が現れるます。少年ははだしでガタガタ震えていました。 話を聞いてみると、彼らは乗っていた客船が氷山に衝突して沈み、気がつくとここへ来ていたのだといいます。(なんだかタイタニック号の乗客みたいですね)
列車はどんどん進み、少女(姉)がいろいろと話しかけますがジョバンニはなぜかイライラしています。どうやらカンパネラが少女と楽しそうに話しているので嫉妬をしているようなのです。 (どうして僕はこんなに悲しいのだろう。僕はもっときれいで大きな心をもたなければならない...) とジョバンニは反省します。


どこからか新世界交響曲が聞こえてきます
          

サソリの火についてのエピソードを少女から聞き終わった時、少女たちは天上と言われるサウザンクロス(南十字)駅で降りると言います。 少女たちと別れたくないジョバンニは、自分が特別乗車券をもっているからいっしょに旅を続けようと提案しますが、ここが終着駅だからと少女たちはさびしそうに分かれます。 


”サウザンクロスにはあらゆる光で散りばめられた十字架が輝いていた”

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  ほとんどの乗客たちも降りてゆき、列車の中にはジョバンニとカムパネルラだけが残こります。
「カムパネラ、また僕たち二人きりになったね。 どこまでもいっしょに行こう。 僕はみんなの幸せのためなら僕の体なんか百ぺん灼いてもかまわない」
「うん。僕だってそうだ」
「けれどほんとうの幸いって何だろう?」
二人はみんなの幸いのために共に歩もうと誓いを交わしますが、その直後に車窓に現れた石炭袋を見て驚きます。 
ジョバンニはカムパネルラをはげましますが、カムパネルラは気の乗らない返事したのち、「あすこにいるの僕のお母さんだよ」と言い残して消えてしまいます。
カムパネルラがいなくなった悲しさから大声で叫び泣くジョバンニに、いままでたびたび聞こえていたやさしいセロのような声が聞こえます。 するとそこには黒い大きな帽子をかぶった大人がやさしく笑いながらすわっていました。
「いまえの友だちがどこかへ行ったのだろう。あの人は今夜、本当に遠くに行ったのだよ。だからカムパネルラを探してもむだだ」と彼はジョバンニをさとします。

そこでジョバンニは急に目が覚め、一人で丘の上で寝ていたことに気がつきます。 ジョバンニは町へ行き、カムパネルラが川に落ちた級友ザネリを救った後、行方不明になったことを知ります。そしてカムパネルラのお父さんからもうすぐジョバンニの父が帰ってくることを知らされます。ジョバンニは牧場によって暖かい牛乳をもらい、父が帰って来るという嬉しい知らせを持って母の待っている家に帰ります。 


『銀河鉄道の夜』は児童文学ですが、漫画化、映画化などされて広く知られていますが、たまには画像を観ないで本だけを読んでイメージするのも悪くありません。
本作品でとりあげているのは、一応、死後の世界のようです。 暗く孤独な宇宙の中をどこまでも駆け上っていく銀河鉄道... その途中で会ういろいろな人たち。
そこで作者が訴えているのは、低いレベルの生き方をしてはダメだということです。 世の中のため、人のために献身できる人間に育つことをこの作品は教えています。


-∞-



なお、『銀河鉄道の夜』はずいぶん昔(少年時代)に読んだきりで内容をよく覚えたないので、今回の記事のために電子書籍版を購入しました。

これはLobyのPCのモニターに映っている表紙。
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まるで本物の本のページのようです。(なんとめくれます!)
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こちらは正真正銘の『銀河鉄道の夜』文庫版
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これは1985年に公開された、登場人物を猫に擬人化した劇場用の『銀河鉄道の夜』 

 





宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』のテーマソングとでも言える「星めぐりの歌」を作詞作曲しています。

星めぐりの歌
作詞・作曲:宮沢賢治

あかいめだまの さそり
ひろげた鷲の つばさ
あをいめだまの こいぬ、
ひかりのへびの とぐろ。
オリオンは高く うたひ
つゆとしもとを おとす

アンドロメダの くもは
さかなのくちの かたち。
大ぐまのあしを きたに
五つのばした ところ。
小熊のひたいの うへは
そらのめぐりの めあて

(星めぐりの歌の動画はこちら


「銀河鉄道の夜」のWallpaperもあります[次項有]ここ

宮沢賢治が幼少時代から見て育った「岩手軽便鉄道」の列車が銀河鉄道のモデルになったと言われている。 「岩手軽便鉄道」で使用されたのはボールドウィン社 製の蒸気機関車であり、同社はかつてアメリカ合衆国ペンシルベニア州に存在した鉄道車両メーカー。1956年に機関車の製造を終了している。


銀河鉄道のモデルと言われるBLW社製の蒸気機関車(1898年)
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宮沢賢治の作品では、他にも『グスコーブドリの伝記』や『注文の多い料理店』が知られています。
『グスコーブドリ...』は、やはり献身をテーマとしたSF小説でなかなかの傑作です。 この作品が発表された1930年代に、宮沢賢治はすでに温室効果とか潮汐発電などを取り上げていたのだからたいした先見の明です。
一方、『注文の多い...』は知らないものはないくらい有名な作品。 子供のころ、この話を聞いて“私ならこうする...”なんて想像した方も多いのでは?

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≪終わり≫


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